不動産ライター兼不動産経営者 監修 中村裕介 宅地建物取引士、保育士
不動産を売却する機会はほとんどないため、どのように進めれば良いのか分からないですよね。
でも動く金額が大きいこともあり、「できるだけ失敗したくない」「トラブルなくスムーズに進めたい」と思っていませんか。
この記事ではこんな悩みを解決します!
- 不動産売却のやり方を最初から最後まで知りたい
- 不動産売却の流れを知りたい
- 不動産業者の選び方を知りたい
- 不動産業者と結ぶ契約について知りたい
- 不動産の売却にかかる税金はどうなるか知りたい
この記事では、不動産売却前の準備から不動産の売却の流れ、売却価格の決め方、不動産業者の選び方といった不動産売却に必要となる基本知識を分かりやすく説明します。
また、記事後半には、不動産の売却にかかる税金を節税できるお得な特例についても解説します。
不動産を売却する方法は、物件種別(マンション・一戸建て・土地など)にかかわらず基本的に同じです。
この記事を読めば、物件種別に関係なく売却に必要な知識を得ることができますので、ぜひ最後まで読んでください。
それでは、実際の不動産売却に先立ち、おさえておくべきポイントや流れについて確認していきましょう。
不動産を売却する前に考えるべき3つのこと
物件を売却する前に考えておきたい3つのポイントがあります。
それぞれのポイントをチェックしていきましょう。
1.自分だけでなく関係者の同意を得ているか
物件の売却に関して、自分だけではなく家族や関係者の同意は得られているでしょうか。
特に相続によって不動産を取得した場合、不動産は共同相続財産となります。遺産分割前に不動産会社と売却をすすめるなどした場合、法的なトラブルに発展するケースがあります。
相続した不動産の処分については、その他の相続人の同意を得る必要がある点に注意しましょう。
また、長年住んできたマイホームには、家族の強い思い入れがあります。反対意見は出ないと思われる場合でも、不動産を売却する旨を家族で相談しておきましょう。
2.売却のタイミングは適切か
不動産を売却する前に、売却のタイミングが適切かを検討することが大切です。
不動産価格には上昇相場と下降相場があります。上昇相場で売却できればより高い利益が得られる一方、下落相場では相場より安い価格で成約する可能性があります。
また市場のニーズとしては、毎年、年度末にあたる1月から3月が、新年度をひかえたシーズンであるため売れやすい時期といえます。相場の見極めはプロでも難しい面がありますが、おおまかな市場の傾向については考慮する必要があるでしょう。
また所有期間が5年以下の物件の場合、譲渡所得にかかる所得税、住民税の税率が高くなります。
不動産業者とも相談して、最適な売却のタイミングを狙いましょう。
新年度を迎えるタイミング以外も狙い目はあり!売却を悩んでいる人は下記の記事がオススメです。
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3.賃貸に出した方が得するケースもある
不動産を処分する方法は、売却だけではありません。
- 築年数が浅い
- 都心部にある
- 駅からの距離が近い
など、有利な条件で賃貸できる物件の場合は、賃貸に出した方が得するケースもあります。
ただし、注意点があります。
住宅ローンの残債がある場合は、基本的には賃貸物件として貸し出すことはできません。
また、賃貸に出す場合は、空室リスクや入居者トラブルなど、賃貸ならではのリスクが伴います。
一度賃貸に出したら、長期間にわたって不動産オーナーとして物件を経営していく覚悟が求められます。
安易な気持ちで賃貸経営を始めるのはおすすめできません。
不動産売却の流れ
ここからは、不動産を売却する基本的な流れについて確認していきましょう。
1.自分で不動産取引の相場を確認する
まずは、自分で不動産取引の相場を確認しましょう。
不動産業者の査定を受ける前におおまかな価格相場を把握しておくことで、不動産業者の査定が適切かを判断できます。
相場の確認方法は、インターネット上にある不動産売買サイトで行うことが可能です。
- エリア
- 築年数
- 面積
など、自分の売却する物件情報を入力して絞り込み検索することで、「自分の物件と似ている物件が、どのくらいの価格で取引されているか」を確認できます。
プロが調べるほど正確ではないものの、目安としてなら自分で相場を調べることが可能です。
下記の記事で具体的な方法を解説しています。
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3.不動産業者に査定を依頼する
不動産業者に売却する不動産の査定を依頼します。
この際、最低でも3社以上の不動産業者に査定を依頼しましょう。
後述する不動産一括査定サイトを利用すると、複数の不動産業者に効率的に依頼することができます。
4.査定をもとに不動産業者を選定する
不動産が提示した査定をもとに、不動産業者を選定します。
5.不動産業者と媒介契約を結ぶ
不動産業者と不動産売却のための媒介契約を結びます。
媒介規約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。
おすすめの媒介契約については後述します。
6.不動産の販売活動の開始・内覧の実施
不動産業者と媒介契約を結び、売出価格を決めたら不動産の販売活動が始まります。
販売活動に関しては不動産業者の活動範囲となります。販売活動について売主が行うことはありませんが、不動産業者からの販売活動に関する報告は逐一確認しましょう。
購入見込み客があれば物件の内覧が実施されます。
7.価格交渉と売買契約の成立
購入希望者が現れると、価格交渉の段階に入ります。
売主と買主双方が売却価格に同意して、売買契約の内容にも合意したら売買契約が成立します。
一般的には売買契約の成立時に、買主から売主に対して売買代金の一部が手付金として支払われます。
手付金の金額は買主と売主双方の合意で決まります。一般的には売却価格の5~10%程度ですが、ケースによって異なります。
8.残代金の決済と不動産物件の引き渡し(売却完了)
売買代金から手付金を差し引いた残代金の決済と、不動産の引き渡し、物件の登記が通常同じ日に行われます。
すべてが終われば、不動産の売却は完了です。
不動産業者選びの基本は一括査定サイトを利用すること
信頼できる不動産業者を選ぶには不動産一括査定サイトを利用するのがおすすめです。
不動産一括査定サイトなら、複数の不動産業者にまとめて査定を依頼できるメリットがあるからです。
なお、すでに信頼できる不動産業者がある場合は、あえて利用する必要はありません。
信頼できる不動産業者を選ぶには複数社に依頼したほうが良い
依頼先が1社のみの場合、その会社が信頼できる会社なのか、提示査定額が適切なのかどうか判断できません。
信頼できる不動産業者を選ぶためには、複数の不動産業者に査定依頼する必要があります。
しかし、複数の不動産業者に一社一社連絡するのは、手間と時間がかかり非効率です。
そこで、一括で複数社に査定依頼できる一括査定サイトを利用するメリットが出てきます。
一括査定サイトは、自分の所有する不動産の情報をサイトに入力することで、その物件の売却を取り扱える複数の不動産業者から査定価格を受け取れる仕組みになっています。
注意点として、不動産取引が少ない地方都市では、一括査定サイトの対象エリア外となる可能性があります。
机上査定・訪問査定を受けて信頼できる業者を選ぶ
一括査定サイトは、机上査定と訪問査定があります。
まずは机上査定でおおよその価格相場を掴みます。その上で机上査定を出した業者の中から最低3社ほど選んで訪問査定を申し込みます。
勘違いしやすいのですが、査定価格が高い業者=良い業者ではありません。業者によっては相場より高い査定額をつけて契約を取ろうとする業者もいます。
業者を選ぶ際は、査定価格の根拠を明確に説明できているか、こちらの質問に的確に答えるなど、有能かつ誠実であるかを基準にして、信頼できる業者を選びましょう。
不動産売却を検討している方は「不動産売却のすまいステップ」のページもご覧ください。
不動産業者との媒介契約は専任媒介契約を選ぶべき
不動産業者との媒介契約は、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類があります。
筆者おすすめの契約と理由を紹介するため、まずは3種類それぞれについてかんたんに説明します。
一般媒介契約は、複数の不動産業者に不動産売却の仲介を依頼することができる契約です。
専任媒介契約、専属専任媒介契約は、一つの業者のみと媒介契約を結び、不動産の売却に関する活動を一任する契約です。
専任媒介契約、専属専任媒介契約は似ている契約ですが、専属専任媒介契約の場合は、自分で見つけてきた買主とも直接取引することができません。
専属専任媒介契約よりは、自由度の高い専任媒介契約を選ぶべきです。
筆者が「専任媒介契約」をおすすめする理由
筆者のおすすめは専任媒介契約です。
なぜなら、不動産業者のモチベーションが、一般媒介契約に比べて高いからです。
一般媒介契約の場合、その他の不動産業者との競争になります。不動産の仲介手数料は成功報酬です。
ほかの業者が売買契約をまとめた場合、それまでにかかった広告料や手間は無駄になります。
これに対して専任媒介契約の場合は、契約期間内であれば、他の不動産業者が買主を見つけてきた場合でも売主からの仲介手数料が見込めます。
このため専任媒介契約を結んだ不動産業者は、腰を入れて販売活動することができます。
魅力のある物件だと一般媒介契約が良いことも
ただし、必ずしも専任媒介契約がベストの選択ではありません。
所有する不動産が都心にある・駅からの距離が近い・築年数が浅いなど「魅力の高い物件」であれば、複数の業者と一般媒介契約を結んだ方が、業者間の競争によってより早くより高い価格で売買成立する可能性があります。
不動産の媒介契約で悩んだら、一度3種類の媒介契約について確認しましょう。
下記の記事で具体的な方法を解説しています。
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売却価格を決めるためのポイント
不動産の売却価格を決めるのは自分自身です。
売却価格を決めるためには、理想価格・最低価格・査定価格の3つの価格を集めることがポイントです。
売却額を決める流れについて確認していきましょう。
1.理想の価格と最低ラインの価格を決める
理想の価格と最低ラインの価格を決めましょう。
売却額の決定には、自分がこれだけ売れたらいいなと言う理想の価格と、住宅ローンを完済するために必要となる額など売却後の生活に影響が出ない最低価格、そして不動産業者による査定価格の3つの価格が必要となります。
最低価格を定めることは、どこまで値引きに対応できるかを判断する際にも役に立ちます。
理想価格を決める際の注意点としては、あまりに現実離れした価格設定は避けることです。10年前に5千万円で買った物件が1億円で売れることはありません。
理想価格の決め方
まずは、エリア、築年数、面積など自分の物件条件と似ている物件の成約事例を確認しましょう。似たような条件でも、取引によって百万円単位での違いが出てきます。
この際、より高く売れた取引事例の価格を参考に、理想価格を決定しましょう。
全国指定流通機構連絡協議会が運営する「レインズ・マーケット・インフォメーション」というサイトで、日本全国の取引情報(成約価格や所在地域等)が確認できるので参考にしてください。
また理想価格を不動産業者に伝えた際に、「相場とかけ離れすぎている」などのアドバイスがあった場合は、理想価格に固執せずにより相場に近い売出価格に設定しましょう。
2.不動産業者の査定価格と理想価格・最低価格を照らし合わせて売却価格を決定する
理想価格と最低価格を、不動産業者の査定価格と照らし合わせて売却価格を決定していきます。
不動産業者の査定価格は、多くの場合、理想価格と最低価格の間に入るはずです。
万が一、査定価格が最低価格を下回った場合は、不動産の売却計画そのものを見直す必要があります。
この場合、
- 売却を諦めて住み続ける
- 最低価格で売りに出して様子を見る
- 最低価格以下で売却して住宅ローンの不足分は自己資金で補う
といった選択になります。
ライフスタイルの変化により土地を離れる必要があり、早急に売却する必要がある場合は、不動産業者への買取依頼も一つの方法です。
不動産業者による買取の場合、一般的に売却価格は市場相場より20%から40%ほど安くなります。
しかし、買主が業者であるため仲介手数料がかからず、数日から数週間という短い期間で売却することができるメリットがあります。
3.スケジュールに合わせて売却価格を変更していく
不動産の売却価格は、場当たり的に変更していくのではなく、売り出す前にスケジュール戦略を立てることが大切です。
まずは理想価格を売出価格として、1ヶ月もしくは2ヶ月と期間を定めます。
理想価格の期間中、市場の反応がなかった場合は物件価格を査定価格にします。それでも売れない状況が続く場合は最低価格に設定しましょう。
スケジュールに沿って売却価格を変更していくことによって、もう少し高く売れたのではないかと後悔することなく効率的に不動産を売却できます。
なお、状況によって最適な価格設定方法は異なります。
不動産を売却する際にかかる税金
不動産を売却する際には、様々な税金がかかります。
各種税金の概要とポイントについて確認していきましょう。
印紙税
印紙税とは、法で定められた課税文書に課税される税金です。
不動産取引においては、売買契約書や建築請負契約書、土地賃貸借契約書、金銭消費貸借契約書などが課税文書にあたります。
印紙税は、これらの課税文書に収入印紙を貼ることで納税します。
譲渡所得税と住民税
不動産を売却する際、譲渡所得税と住民税が発生するケースがあります。
譲渡所得税と住民税の課税対象となる課税譲渡所得は、以下の式で算出されます。
課税譲渡所得=売却額− (取得費−減価償却費)− 譲渡費用
売却によって得た金額(売却額)が物件を買った時の価格(取得費)と譲渡費用を差し引いて、課税譲渡所得が決まります。
課税譲渡所得がプラスになれば譲渡益、マイナスになったら譲渡損失となります。
譲渡損失となった場合、課税対象となる所得がゼロなので、譲渡所得税と住民税は課税されません。
また課税譲渡所得がある場合でも、マイホーム(居住用財産)であれば3,000万円の特別控除が受けられます。
税金は自分で計算できます。
どれだけ税金を支払う必要があるか気になる人は、の記事がおすすめです。
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不動産を売却する際の節税のポイント
不動産を売却する際には、税制上のさまざまな特例が利用できます。
不動産を売却する際の節税のポイントについて確認していきましょう。
特例の適用を受ける際には、確定申告が必要となるので注意しましょう。
所有期間が5年超えなら税率が低くなる
不動産の所有期間の違いによって、譲渡所得の税率が異なります。
所有期間が5年以下の場合、所有期間が5年超えの場合の譲渡所得の税率は、下記のとおりです。
- 所有期間が5年以下:39.63%(所得税30.63% 住民税 9%)
- 所有期間が5年超え:20.315%(所得税15.315% 住民税 5%)
上記のように、所有期間が5年超えなら税率が低くなります。
所有期間の計算方法は、売却する年の1月1日時点で所有期間が5年超えとなる点に注意しましょう。
不動産売却で利益が出た場合に利用できる特例
不動産売却で譲渡益が出た場合に利用できる、3つの特例について下記にまとめました。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除
居住用財産を譲渡して譲渡益が出た場合、所有期間に関係なく譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。3年に1度の適用制限があります。譲渡益が出た場合に、一番利用する人が多い特例です。
10年超所有軽減税率の特例
10年超所有軽減税率の特例とは、居住用財産を譲渡して譲渡益が出た場合に利用できる特例の一つです。
以下のとおり、譲渡所得の税率が軽減されます。
- 課税譲渡所得が6,000万円以下の部分:14.21%(所得税10.21% 住民税4%)
- 課税譲渡所得が6,000万円超の部分:20.315%(所得税15.315% 住民税5%)
3,000万円の特別控除との併用が可能です。
不動産を譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年以上の場合に適用可能です。3年に1度の適用制限があります。
特定居住用財産の買換え特例
特定居住用財産の買換え特例は、居住用財産を譲渡して譲渡益が出た場合に利用できる特例の一つです。
買い替えたマイホームの金額が譲渡益を上回る場合、譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。
買い替えたマイホームを将来譲渡した時まで課税を繰り延べるのであり、譲渡益が非課税になるわけではありません。
譲渡した年の1月1日時点で居住期間が10年以上であることが主な適用条件です。①、②の特例との重複適用はできません。
不動産売却で損失が出た場合に利用できる特例
不動産売却で譲渡損失が出た場合に利用できる、2つの特例について下記にまとめました。
この2つの特例の適用期限は、平成31年12月31日までとなっていますので注意しましょう。
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
居住用のマイホームを売却してマイホームを買換えた際、譲渡損失が出た場合に適用される特例です。
譲渡損失が出た年の給与所得や事業所得と、損益通算することができます。
損益通算とは、譲渡所得を計算して出た赤字を、給与所得などその他の所得と相殺することです。
繰越控除とは、損益通算で相殺しきれなかった分の赤字を翌年以降の所得と相殺することです。
この特例では、損益通算した年でも控除しきれない場合、繰越控除として赤字分を翌年以降の3年間の所得から控除することができます。
適用条件は以下の通りです。
特例の適用条件
- 自分が居住しているマイホームであること
- 売却する年の1月1日時点でマイホーム所有期間が5年を超えていること
- 繰越控除を受ける年の所得金額の合計が3,000万円以下であること
- 売却相手が親など、売主と買主が特別な関係ではないこと
- 確定申告を行うこと
- 新しい住宅を購入した年の翌年の12月31日までに居住すること、またはその見込みであること
- 新しい住宅を購入した年の12月31日において、新しい家に10年以上の住宅ローンがあること。
- 床面積が50平方メートル以上であること
以下は、具体的な計算例です。
平成30年に、マイホームを買い替える予定の給与所得500万円のA氏が、かつて4,000万円で買った土地と家を2,000万円で売却して、126万円の売却費用がかかったとします。※簡略化のため減価償却費の概念は割愛します。実際の計算では建物部分の取得費は、減価償却によって差し引かれます。
この場合、下記の式で譲渡損失が算出されます。
2,000万円(譲渡価格)-4,000万円(取得費用)-126万円(譲渡費用)=▲2,126万円(譲渡損失)
この譲渡損失と、給与所得500万円を譲渡損失の損益通算をして、平成30年の所得を出します。
平成30年の所得を出す式は、下記の通りです。
500万円(給与所得)-2,126万円(譲渡損失)=▲1,626万円
平成30年の所得はマイナスなので、所得税はゼロであり、A氏の平成30年の源泉徴収税は全額還付されます。
残りの▲1,626万円の譲渡損失は翌年以降の3年間(平成31年、平成32年、平成33年)への繰越控除が認められます。給与所得が500万円で固定とすると、平成31年、平成32年、平成33年も所得はマイナスとなります。
平成31年の所得:500万円-1,626万円=▲1126万円
平成32年の所得:500万円-1,126万円=▲626万円
平成33年の所得:500万円-626万円=▲126万円
このため、平成31年、平成32年、平成33年の源泉徴収税も全額還付されることになります。
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
住宅ローンの残債があるマイホームを、住宅ローンの残高を下回る価格で売却して譲渡損失が出た場合に適用される特例です。
譲渡損失が出た年の給与所得や事業所得と損益通算することができます。
控除しきれなかった場合はその赤字分を翌年以降の3年間の所得から控除することができます。
適用条件は以下の通りです。
特例の適用条件
- 自分が居住しているマイホームであること
- 売却する年の1月1日時点でマイホーム所有期間が5年を超えていること
- 繰越控除を受ける年の所得金額の合計が3,000万円以下であること
- 売却相手が親など、売主と買主が特別な関係ではないこと
- 確定申告を行うこと
- 譲渡した住居の売買契約日の前日において、譲渡した住居について償還期間が10年以上の住宅ローンの残高があること
- マイホームの譲渡価額が譲渡した住居の住宅ローンの残高を下回っていること
この特例では、次の2つの価格を比べて、額が少ない方が譲渡損失として控除できる金額となります。
- マイホームを売却した際の譲渡損失の金額
- マイホーム売却後の住宅ローンの残債(元の住宅ローン残高から売却金額を差し引いた額)
例えば3,000万円で購入して、ローン残高が2,000万円のマイホームを、1,000万円で売却して、譲渡費用が100万円とします。
マイホームを売却した際の譲渡損失は次の式で算出されます。
1000万円ー3000万円−100万円=▲2100万円
マイホーム売却後の住宅ローンの残債は次の通りです。
2,000万円ー1,000万円=1,000万円
マイホームを売却した際の譲渡損失2100万円より、マイホーム売却後の住宅ローンの残債1,000万円の金額が小さいため、譲渡損失として控除できる金額は1000万円となります。
譲渡損失1,000万円が、売却した年の給与所得や事業所得と損益通算しても控除しきれなかった場合は、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除」のケースと同様に、売却した年の翌年以降の3年間への繰越控除ができます。
まとめ
それでは不動産売却についておさらいしましょう。
記事のおさらい
- マンション・一戸建て・土地でも不動産を売却する方法は同じ
- 不動産売却は関係者と相談してタイミングを見極め、賃貸などのその他の可能性も考慮する
- 媒介契約は業者のモチベーションが上がる専任媒介契約がおすすめ
- 不動産業者は一括査定サイトを通じて選ぶ
- 不動産の売却価格は理想価格・最低価格・査定価格を用いて決める
- 売却価格の変更は事前のスケジュール戦略に沿って行う
- 不動産を売却する際にかかる税金は印紙税・譲渡所得税・住民税がある
- 売却で利益が出た場合、損失が出た場合それぞれに利用できる税制上の特例がある
不動産の売却は不動産業者を選んだり価格を決めたり税金について考えたりと、様々な事柄を考慮する必要があります。
そのため複雑で取っ付きにくいイメージがありますが、一つ一つのステップをこなしていけば難しい作業ではありません。
今回の記事内容を、不動産の売却を活用していただければ幸いです。
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不動産ライター兼不動産経営者 監修 中村裕介 宅地建物取引士、保育士
1983年福岡生まれ。上海復旦大学卒。 商社、保育園、福祉施設での勤務を経て、現在は不動産の記事を中心に手がけるライター兼不動産経営者。実際に店舗・住宅を提供している立場から、不動産に関する記事を執筆中。 趣味はフットサル、旅行、読書。美容と健康のために毎日リンゴ人参ジュース飲んでます。