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コンサルタント 監修 中村昌弘
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マンションに住んでいると、毎月必ず修繕積立金を支払っていると思います。修繕積立金額はマンションによって異なりますが、数千円から1万円を超えているマンションもあるでしょう。
修繕「積立金」という名称になっているので、定期預金のように個人で積み立てていると勘違いしている人もいます。そのため、マンション売却時には返還されると思っている人も意外と多いです。
しかし、結論からいってしまうと、修繕積立金は返還されません。ちなみに修繕積立金と一緒に支払っている管理費も返還されません。
この記事では、マンション売却時の修繕積立金の扱い、および管理費の扱いについて以下を解説していきます。
- 修繕積立金と管理費はなぜ返還されないか?
- 修繕積立を滞納している場合のマンション売却はどうなるのか?
- マンション売却時にトラブルリスクはないのか?
また、補足として修繕積立金を意識することでマンション売却にメリットとなることがあるので、その点も詳しく解説していきます。
筆者は、元々マンションディベロッパーの営業マンであり、数多くのマンションを仲介してきました。
その過程では、修繕積立金や管理費についての上記の質問も多く、管理会社にヒアリングしてどのような対応になるかを熟知しています。
細かい部分ではありますが、マンション売却時に知っておくとプラスになることですので、マンション売却を検討している人はぜひ確認してみてください。
この記事の目次
売却時は修繕積立金が返還されない
冒頭でいったように、マンション売却時に修繕積立金は返還されません。
その理由については、そもそも修繕積立金とは何か?どのような扱いなのか?を知ることで分かってきます。
理由1.修繕積立金とは長期修繕計画にもとづくもの
修繕積立金とは、マンションの共用部を修繕するための費用であり、具体的には以下のような項目に充てられます。
- 外壁の吹付塗装工事
- 外壁のタイル交換工事
- 屋上の防水工事
- 共用部の鉄部塗装工事
- 設備工事(給水管・照明器具)
- エントランスの改修工事
- 機械式駐車場装置更新工事
上記はほんの一部であり、修繕項目はもっとたくさんあります。
このように、修繕積立金はマンションの外観や、全員で利用する部分に充てられる修繕費用であり、個人的に使うお金ではありません。
この修繕積立金は、20年~30年スパンで策定する「長期修繕計画」をもとに金額を決めています。長期修繕計画とは上記のような修繕項目を、いつ、どの程度修繕するかが全て記載してある計画表です。
つまり、マンション売却時に修繕積立金を返還するということは、予定していた修繕工事費用が足りなくなってしまうのです。そうなると、長期修繕計画で策定した項目の修繕ができなくなります。
修繕工事ができなければ、他の入居者に迷惑がかかりますし、マンションの劣化も早くなってしまうという大きなデメリットもあります。
そのため、仮に修繕をほとんどしていない段階でマンションを売却しても、修繕積立金が戻ってくることはありません。
理由2.修繕積立金は組合の財産という扱い
マンションは、入居者全員で管理組合を組成し、管理組合が主体となり管理費や修繕積立金を徴収するという仕組みです。そのため、修繕積立金の扱いは「管理会計」に組み込まれた管理組合の財産です。
つまり、個人で修繕積立金を支払っていたとしても、そのお金は管理組合の財産となっており、個人で扱うお金ではないので返還されません。
管理費も返還されない
冒頭でいったように、管理費も返還されることはありません。というのも、管理費も前項の修繕積立金と同様、管理組合の財産であり、支払った時点で個人のお金ではないからです。
そもそも管理費とは以下のような項目に充てられるお金です。
- 管理人の人件費
- 定期的な清掃費用
- 警備システムなどの付帯設備の費用
- 設備機器の点検費用
このように、管理費は入居者個人ではなく、入居者全員に対して「暮らしやすいマンション」を実現させるために使われます。
そのため、管理費が返還されてしまうと、「清掃費用が足りない」「管理人の人件費が払えない」となってしまいます。だからこそ、修繕積立金と同じく返還はされないというわけです。
修繕積立金を買主と精算するケースがある
ただ、マンションの修繕積立金と管理費は買主と精算するケースはあります。
そもそも、修繕積立金も管理費も、基本的には次月分を支払う「前納」方式になります。
たとえば、4月10日にマンションを引き渡したとしても、4月分の管理費と修繕積立金は既に3月中に支払っているということです。
しかし、4月10日にマンションを引き渡しているということは、4月10日までは売主が支払うべきですが、4月11日~4月30日までは買主が支払うべきです。
そのため、その分の管理費・修繕積立金を案分して買主に請求する場合があり、それを「管理費・修繕積立金の精算」といいます。
しかし、それは義務ではなく、仲介業者によって精算するかどうかは異なります。そのため、仲介会社に相談した上で、買主に精算するという合意を得ると良いでしょう。
修繕積立金を滞納したままの売却は可能だが…
では次に、修繕積立金を滞納したままマンションを売却したらどうなるのか?という話です。あまり多いケースではありませんが、仮に滞納してしまっている人は必ずチェックしてください。
この点を知らずにマンション売却をしてしまうと、最悪の場合には買主とのトラブルリスクに発展します。
次の購入者に承継される
結論からいうと、修繕積立金を滞納したら、その滞納分は購入者に承継されるという仕組みです。これは「区分所有法」という法律で定められており、厳密には以下のように決まっています。
『区分所有者が規約・集会決議に基づいて他の区分所有者に対して有する債権は特定承継人に対しても行うことができる』
区分所有者とは他の入居者を指し、集会決議とは管理組合の総会を指します。そして、特定承継人とはこの場合「購入者」を指すのです。
少々ややこしい言い回しですが、「ほかの入居者は協議の結果、滞納している分を購入者(新たに管理組合員になる者)に請求できる」という意味になります。「債権」という言い方をしているので、修繕積立金だけでなく管理費を滞納していても同じです。
つまり、管理組合は滞納者に修繕積立金と管理費という「債権」を有するので、両方とも新たな入居者に請求できるということです。さらに、これは新しい入居者である購入者が、売主が滞納している事実を知らなくても請求できます。
滞納したまま売却するときの注意点
このような事情なので、仮に修繕積立金や管理費を滞納している売主は、買主にその旨を必ず告知しなければいけません。宅地建物取引業法(宅建業法)で義務付けられていることです。
買主への告知は仲介業者に義務付けられていることですが、仮に売主がそれを仲介業者に伝えずに売買契約を結んでしまえば、買主とトラブルになる可能性は極めて高いでしょう。
マンションの仲介をするにあたっては、売主の管理費・修繕積立金の滞納を管理組合に確認することは、必要不可欠な業務です。
ただ、トラブル防止のためには売主側から仲介業者に告知するのが理想といえます。
修繕積立金が増額するタイミングを意識して売却する
さいごに、修繕積立金が増額するタイミングを意識するというアドバイスをします。場合によってはマンションが売りやすくなるので、しっかりと理解しておきましょう。
修繕積立金が増額するタイミングを意識することで、売主は2つのメリットを得られる可能性があります。
増額前に売却できれば、余計なランニングコストを払わないで済む
上述したように、長期修繕計画によって修繕積立金額は決まっています。また、修繕積立金は時期によって増額することがあり、多くのマンションでは「〇年で○%アップする」という段階積立方式を採用しているのです。
実際に修繕積立金額が上がるかどうかは、管理組合の判断やマンションの劣化具合によりますが、増額すれば月々何千円、もしくは1万円以上増額することもあるでしょう。
そのため、まずは管理規約集で付属されている長期修繕計画表をチェックし、将来的に修繕積立金がどうなるかをチェックしましょう。仮に、増額するタイミングで売却できれば、無駄なコストを払わずに済みます。
増額前に売却活動すれば、買い手がつきやすい
また、修繕積立金が増額してからマンション売却をすれば、広告に記載する修繕積立金額が上がってしまいます。
買い手側はその金額も加味して物件選びをするので、増額前に売却した方が買い手側の負担も少なく見えて売りやすいということです。
増額するかは管理組合の判断なので、正式に決定していなければ告知義務はありません。ただ、もちろん管理組合の決議で既に増額が決まっていれば、告知しなければいけない点は勘違いしないようにしましょう。
以上2点の理由より、修繕積立金増額のタイミングを知ることで、マンションの売却がしやすくなるというわけです。
修繕積立金が増額するタイミング
さて、そんなマンションの修繕積立金が増額するタイミングについて、以下3点を知っておきましょう。
- 2つの方式がある
- 5年、10年の節目に注意
- 大規模修繕のタイミング
徴収時期と金額が決まっているケース(一時金方式)
修繕積立金の増額に関しては、上述した段階積み上げ方式以外にも「一時金方式」があります。
修繕積立金の増額方式
- 段階積み上げ方式
- 一時金方式
一時金方式は、「10年後に30万円の修繕積立金を徴収する」というように、あらかじめ時期と金額を決めておく方式です。
これは段階積み上げ方式と違い、原則規定通りにマンションの入居者から徴収します。実際は、支払わない入居者が出るなどのリスクがあるため、最近のマンションでは採用しているところは少ないでしょう。
しかし、一時金方式は居住年数に関係ないので、買い手側は「購入して1か月後に30万円支払う」という状況もあり得ます。
この点は重要事項説明書に盛り込むのが一般的なので、買主に告知せずに売ることはないです。
なので、トラブルの心配はありませんが、契約直前に伝えるのは契約が見送りになるリスクがあるので避けましょう。
築年数5年・10年ごとの節目
修繕積立金が上昇するタイミングは、5年と10年という節目の時期が多いです。というのも、段階積み上げ方式は「5年で30%」など、5年ごとに刻んでいるケースが多いからです。
なぜなら、長期修繕計画の項目では、細かい修繕は5年ごとに発生するケースが多く、そのときのために増額するという理由です。そして、一時金方式は10年ごとに設定しているケースが多いです。
そのため、築5年・10年の節目の時期、またはその倍数にあたる時期は、特に修繕積立金の増額に気を付けてマンション売却した方が良いでしょう。
大規模修繕のタイミング
また、5年・10年以外で気を付けるべきタイミングは、大規模修繕のタイミングです。大規模修繕とは、主に外壁の修繕に伴う大規模工事のことであり、大がかりな工事になるため高額な修繕金を費やします。
そのため、一時金方式の場合は10年ではなく、大規模修繕に合わせた12年に設定している場合があるのです。
また、段階積み上げ方式はあまり関係ありませんが、仮に修繕積立金が足りなければ十分な修繕ができません。そうなると、建物が劣化したままの状態で売り出すリスクがあります。
このような事情から、5年・10年に加えて、12年ごとの周期も意識してマンション売却に臨むと良いでしょう。
まとめ
それでは、今回解説した「マンション売却時に知っておくべき『修繕積立金』5つのこと」について、覚えておくべきことをおさらいしましょう。
記事のおさらい
- 修繕積立金と管理費はマンション売却時も返還されない
- ただし買主との協議によっては精算される
- 管理費を滞納したまま売却すると買主に承継される
- トラブルリスクを防ぐためには仲介業者に必ず告知する
- 修繕積立金が上がる前に売却することでメリットがある
まずは、修繕積立金も管理費も、原則はマンション売却時に返還されない点を理解しておきましょう。
そして、仮にこれらの費用を滞納しているときは、トラブルリスク防止のために仲介業者に伝えておくことが大切です。
さらに、修繕積立金が上昇するタイミングを調べて、それも売却する時期の参考にすることをおすすめします。そうすることで、無駄なコストを支払わなくて良いですし、売却がしやすくなります。
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コンサルタント 監修 中村昌弘 宅地建物取引士
新卒で不動産ディベロッパーに勤務し、用地仕入れ・営業・仲介など、不動産事業全般を経験。入居用不動産にも投資用不動産にも知見は明るい。独立後は、不動産事業としては主にマンション売却のコンサルタントに従事している。趣味は読書。好きな作家は村上春樹、石原慎太郎。