ALC外壁の特徴とは?メリット・デメリット・費用相場から塗装時の注意点まで解説

ALCパネルは、寿命が約60年持つと言われる高耐久性の外壁材です。
住宅に使用される外壁材は、サイディングボードやモルタルなどさまざまな種類がありますが、ALCパネルは優れた性能を持つことから注目を集めています。
このページでは、ALC外壁の特徴や種類、メリット・デメリット、価格相場などの基礎知識をまとめました。
ALCパネルについて知識がない方でも、わかりやすいように紹介しています。
外壁材を検討している方は、参考にしてください。

ALCパネルの特徴
ALCとはAutoclaved Lightweight aerated Concreteの頭文字を取った名称で、高温高圧蒸気養生した軽量気泡コンクリートのことです。 主原料は珪石やセメント、生石灰、アルミニウム粉末で、建築資材としてさまざまな用途で使用されています。 ALCを板状にしたものが、ALCパネルです。 ALCは施工や加工が比較的簡単で、断熱性や耐火性、遮音性に優れているのが特徴です。 普通のコンクリートよりも軽いため、建物の軽量化を実現できます。 屋根や床、外壁材として使用すると、基礎や躯体のコストダウンにつながります。 一方で、防湿性や防水性が弱く、防水処理を施さなければいけません。
ALCパネルの種類
ALCパネルは、次の3つの要素で種類に分けられます。
- 形状による違い
- 厚さによる違い
- 表面加工による違い
それぞれの要素について見ていきましょう。
形状による違い
ALCパネルは、形状の違いによって2種類あります。
- 一般パネル
- コーナーパネル
一般パネルは外壁の面部分で使うため、平らな形をしています。
一方で、コーナーパネルは外壁の角部分使うため、L字型です。
いずれも形状が異なるだけで、素材や模様に違いはありません。
厚さによる違い
ALCパネルは、厚さが2種類あります。
- 厚形パネル:厚さ75mm以上
- 薄形パネル:厚さ35mm以上75mm未満
厚形パネルは、主に鉄骨造や鉄筋コンクリート造などの耐火建築物で使用されます。
一方で、薄形パネルは、耐久性の弱い木造や鉄骨造で使われるALCパネルです。
厚さ50mmは鉄骨造や木造の建築物に、厚さ35mmと37mmは主に木造に使用されます。
表面加工による違い
ALCパネルは、表面加工の有無によって2種類に分けられます。
- 平パネル
- 意匠パネル
平パネルは、特にデザインのない平らなALCパネルです。
一方で、意匠パネルは、表面に模様が施されたデザイン性のあるALCパネルです。
ALC外壁のメリット
ALC外壁を、他の外壁材と比較したときのメリットは、次の3つです。
- 他の外壁材より耐用年数が長い
- 断熱性が高く光熱費を削減できる
- 耐火性、耐震性に優れている
メリットを具体的に見ていきましょう。
メリット1.他の外壁材より耐用年数が長い
ALC外壁のメリット1つ目は、他の外壁材よりも耐久性が優れているため、耐用年数が長いことです。
なぜなら、ひび割れや反りの原因である木繊維やパルプ材などの有機物が、含まれていないからです。
定期的にメンテナンスすると、約60年も持つと言われています。
メリット2.断熱性が高く高熱費を削減できる
ALCパネルのメリット2つ目は、耐熱性が高いため、光熱費を削減できることです。
夏の暑さや冬の寒さにも負けず、室内の温度を一定に保つ断熱効果があります。
具体的にALCパネルの熱伝導率は、一般的なコンクリートの10分の1程度です。
調湿性があるのは、ALCパネルの内部に数多くの気泡を含んでいるからです。
気泡に包まれた空気が層を作って、熱の伝わりを抑えています。
メリット3.耐火性、耐震性に優れている
ALCパネルのメリット3つ目は、耐火性と耐震性に優れていることです。
主原料が無機質の珪石やセメントなどであるため燃えにくく、万が一燃えても有害物質を発生しません。
実際に阪神淡路大震災のときは、大火事で被害が拡大していく中、ALC外壁の建築物は延焼を防ぎました。
ALC外壁のデメリット
ALC外壁のデメリットは、次の3つです。
- 吸水性が高くメンテナンスが必須
- つなぎ目が多い
- 他の外壁材より単価が高い
デメリットを具体的に見ていきましょう。
デメリット1.吸水性が高くメンテナンスが必須
ALC外壁のデメリット1つ目は、吸水性が高いため、メンテナンスが欠かせないことです。
吸水性が高い理由は、細かい気泡が含まれているからです。
ALCパネルはサイディングボードと違って外壁内部に透湿防水シートを貼らないので、水を吸収すると外壁がひび割れする原因になります。
そのため、外壁にALCパネルを使用するには防水塗装をしたり、断熱材との間に空気層を作ったりして、防水性を高めなければいけません。
デメリット2.つなぎ目が多い
ALCパネルのデメリット2つ目は、モルタルなどの塗り壁と違ってつなぎ目が多いことです。
つなぎ目が多いと、コーキングから雨漏りするリスクが高くなります。
ALC外壁の劣化を防ぐには、シーリング剤でつなぎ目をしっかりと埋めなければいけません。
デメリット3.他の外壁材より単価が高い
ALCパネルのデメリット3つ目は、他の外壁材に比べて単価が高いことです。
- ALCパネル:7,500円〜
- 窯業系サイディング:3,000円〜
- 金属系サイディング:4,000円〜
- 木質系サイディング:6,000円〜
- 樹脂系サイディング:8,000円〜
- モルタル:4,500円〜
耐用年数が長いのでコストパフォーマンスに優れていますが、定期的なメンテナンスが欠かせないので、トータルコストを考えると高い傾向があります。
ALC外壁の価格相場
外壁材 | 費用(㎡あたり) | 耐用年数 | メンテナンス頻度 |
---|---|---|---|
ALCパネル | 5,500〜7,200円 | 約60年 | 10年 |
モルタル | 4,500〜7,000円 | 約30年 | 10年 |
窯業系サイディング | 4,000~5,000円 | 約40年 | 7年 |
金属系サイディング | 3,000~9,000円 | 約40年 | 10年 |
ALC外壁に張り替えする場合、費用相場は30坪の住宅で150万円〜250万円です。
面積1㎡あたりの材料費の目安は、5,500円です。
材料費以外にも足場の設置や撤去、張り替え作業、足場の解体作業などの費用もかかります。
一方で、ALC外壁のメンテナンスは、主に塗装と補修作業を行います。
塗装メンテナンスにかかる費用相場は、30坪の住宅で70万円〜100万円です。
ALC外壁は機能性で優れている分、価格も高くなるので、予算やライフプランと合わせて外壁材の種類を検討しましょう。
ALC外壁が劣化したときのメンテナンス方法
ALC外壁が劣化したときに行うメンテナンス方法は、次の3つです。
- シーリング補修
- 外壁塗装
- パネルの張り替え
どれもALCパネルの弱点である水から建物を守るためのメンテナンスです。
具体的にどんな内容なのか見ていきましょう。
1.シーリング補修
シーリング剤は、外壁材の目地から水が入るのを防ぐための樹脂性の防水剤です。
肉痩せや剥離、ひび割れなどの症状が見られたら、増し打ちや打ち替えなどの補修を行います。
増し打ちは、古いシーリング剤の上から新しいシーリング剤を充填する方法です。
一方で、打ち替えは古いシーリング剤を取り除いて、新しいシーリング剤を充填する方法です。
打ち替えは増し打ちよりも費用が高いですが、長持ちするので、基本的に打ち替えがおすすめです。
2.外壁塗装
外壁塗装は、外壁の防水効果を高めて、ALC外壁の劣化や水の侵入を防ぐ効果があります。
ALCパネルは水に弱い外壁材なので、10〜15年ごとに塗装して、防水性を高めなければいけません。
外壁塗装のメンテナンスをせずに放置していると、ALC外壁の内部に雨水が入り、家全体の腐食につながります。
クラックや塗膜剥離などが起きている場合は、早急に対応する必要があります。
3.パネルの張り替え
パネルの張り替えは、元々の外壁を解体・撤去して、新しい外壁材を張り付けることです。
外壁が劣化しすぎてシーリング補修や外壁塗装ではどうにもならないときは、ALCパネルを張り替えなければいけません。
工事が大規模になり、費用や工期がかかるのが、デメリットです。
一方で、解体時に下地部分までチェックしてメンテナンスできるので、張り替え後は安心して住み続けられるメリットがあります。
ALCパネルを外壁に使うときの注意点
ALCパネルは耐久性に優れた外壁材ですが、使用するときは次の3つに注意しなければいけません。
- 透湿性の高い塗料を選ぶ
- 定期的にメンテナンスする
- コーキングの補修もする
3つの注意点を具体的に見ていきましょう。
注意点1.透湿性の高い塗料を選ぶ
ALCパネルは吸水性が非常に高いため、防水対策が欠かせません。
塗装するときは、透湿性が高い塗料を選んで外壁表面を水から守り、腐食を予防することが大切です。
ALCパネルと相性がよく、透湿性の高い塗料を3つ紹介します。
SMASH(旭化成)
製品名 | SMASH |
---|---|
メーカー | 旭化成建材 |
塗料の種類 | アクリルシリコン樹脂 |
耐用年数 | 約30年 |
単価相場 | 8,000円/m² |
旭化成建材のSMASHは、高耐久性能のシリコーンレジンとアクリルシリコン樹脂を組み合わせた塗装剤です。
一般的なアクリル系やアクリルシリコン系の塗料に比べて、2〜3倍の耐久性があります。
アレスダイナミックTOP(関西ペイント)
製品名 | アレスダイナミックTOP |
---|---|
メーカー | 関西ペイント |
塗料の種類 | シリコン樹脂 |
耐用年数 | 約15年 |
単価相場 | 2,600円/㎡ |
関西ペイントのアレスダイナミックTOPは、ラジカル制御型塗料の一種です。
ラジカル制御とは紫外線による塗膜の劣化を抑える機能で、汎用よりも耐用年数は3〜5年長いのが特徴です。
アレスダイナミックTOPは、ラジカル制御型塗料の中でも耐用年数が長いという特徴があります。
EC-5000PCM-IR(アステックペイント)
製品名 | EC-5000PCM-IR |
---|---|
メーカー | アステックペイント |
塗料の種類 | ピュアアクリル樹脂 |
耐用年数 | 15年以上 |
単価相場 | 3,400円/㎡ |
アステックペイントのEC-5000PCM-IRは、最高レベルの防水性と耐候性、遮熱性も併せ持つ塗装剤です。
600%の伸縮性があるため、建物のひび割れに塗膜が追随して、水の侵入を防ぎます。
注意点2.定期的にメンテナンスする
塗料による防水効果が弱くなると、外壁に雨水が侵入し家全体の腐食を促進してしまいます。
そのため、定期的にメンテナンスして防水効果を保たなければいけません。
ALCパネルのメンテナンス頻度の目安は、約10年です。
安心して長く住み続けるためにも、ALCパネルの張り替えや外壁塗装をしてから10年が経ったら一度業者に状態を見てもらうといいでしょう。
注意点3.コーキングの補修もする
ALC外壁は、パネルを組み合わせたときにつなぎ目から水が入らないようにコーキングで埋めます。
目地の数が多いので、他の外壁材に比べて雨漏りのリスクが高くなります。
そのため、外壁塗装のメンテナンスをするときに、コーキングの補修もあわせて行いましょう。
主なALCパネルメーカー
日本国内のALCメーカーは、3社です。
全てのALCパネルは、JIS規格に適合した製品です。
「JIS A 5416 : 2016 軽量気泡コンクリートパネル」として、各メーカーが認証を受けています。
JIS規格の認証を受けた製品は、厳しい生産管理のもとで優れた品質と寸法精度が守られているため、安心して使用できます。
まとめ
ALCパネルは耐久性に優れており、コンクリートよりも軽いのが特徴です。
- 他の外壁材より耐用年数が長い
- 断熱性が高く高熱費を削減できる
- 耐火性、耐震性に優れている
上記3つのメリットがあり、高性能な外壁材ですが、防水性が弱いのがデメリットです。
そのため、ALCパネルを外壁に使用するときは、防水性の塗料を選び、定期的なメンテナンスが欠かせません。
ALCパネルのメリットやデメリット、注意点を知って、あなたに最適な外壁材を選んでくださいね。