クラック補修とは?修理しないと危険なひび割れの原因・方法・費用

クラックとは、外壁や基礎部分に発生したひび割れ・亀裂のことです。
家の壁にひび割れができてしまったら、「倒壊のおそれはないのか?」「欠陥工事だったのではないか?」と不安ですよね。
実際に、壁がずれて見えるような大きなクラックは、家の構造が歪んでしまっていることが原因なので、すぐに修理しなければ危険です。
しかし、壁や塗料の性質上、細かなクラックができてしまうのは仕方がない場合もあります。
こうしたクラックは、多少放置していても、家の構造に影響することはほとんどありません。
とはいえ、自分の家のクラックが、放置してもいいのか、すぐに修理しなければいけないのか、すぐにはわかりませんよね。
そこでこの記事では、クラックができる原因と、補修するべきクラックの基準のほか、クラックの補修方法などについて紹介していきます。

クラック(ひび割れ)補修とは
クラック補修とは、外壁や外壁塗装にできたクラック(ひび割れ)を補修する作業のことです。
塗料やシーリング材などの補修材でクラックの溝を埋めた後、補修跡が目立たないように塗装をします。
コンクリート外壁の場合、クラックの周りをカットして溝を広げてから、補修材を埋め込むこともあります。
壁にできたクラックを補修せずに放置しておくと、雨漏りが起きるほか、シロアリなど害虫が発生する可能性もあります。
鉄筋コンクリート(RC)造の建物の場合、雨漏りによって内部の鉄筋が錆びてしまうと、建物全体の強度が落ちる危険もあるのです。
そのため、クラックはできるだけ早めに補修するのがおすすめです。
クラックが起きる原因
クラックが起きる原因は、壁や塗料の性質によるもののほか、地震などによる壁の歪みなどが挙げられます。
クラックの原因 | 見分け方 | クラックの種類 |
---|---|---|
塗料の劣化 | クラックが小さい (幅0.3mm以下) |
・ヘアクラック |
壁材の性質 | クラックが小さい (幅0.3mm以下) |
・乾燥クラック ・縁切れクラック |
建物の歪み | クラックが大きい (幅0.3mm以上) |
・構造クラック ・貫通クラック ・開口クラック |
それぞれの原因について、詳しく紹介していきます。
塗料の劣化
劣化する前の塗料は、外壁材の伸縮に合わせて、わずかに伸縮するようにできているため、ひび割れることはありません。
しかし、塗装してから10年以上経過した塗料は劣化して伸縮できなくなり、壁に引っ張られてひび割れてしまいます。
塗装してから5年以下など、塗料の耐用年数より極端に短い期間で塗料にクラックができた場合、適切な塗装ができていなかった可能性があります。
適切でない塗装の例
- 壁材・下塗り剤などと相性がよくない塗料を使用した
- 塗料がしっかり乾く前に重ね塗りを行った
- 塗料と添加剤の調合が間違っていた
塗料の劣化や施工不良によるクラックは幅0.3mm以下の「ヘアークラック」と呼ばれます。
壁材の性質
モルタルやコンクリート、漆喰など壁に直接塗って施工する壁材は、乾くと水分が抜けて、壁がわずかに収縮する性質を持っています。
乾いた状態で縮んでしまうため、ひび割れが起きやすくなります。
ちょうど、紙ねんどが乾くとひび割れを起こすのと、同じ仕組みです。
壁材性質によるクラックは「乾燥クラック」と呼ばれ、幅が0.3mm以下と細かい場合が多いです。
また、モルタルなどの壁は、壁を作っている途中で作業をやめて再開した場合や、部分的にやり直しをした場合も、クラックが起きやすくなります。
壁材のつぎはぎ部分が原因のクラックを「縁切れクラック」といいます。
縁切れクラックは、初期段階は0.3mm以下と細かいですが、放置しておくと0.3mm以上の大きなクラックに発展する可能性があります。
建物の歪み
建物がゆがむと、壁が元の形を保てなくなってひび割れを起こします。
建物の歪みには、外的要因と内的要因の2つがあります。
- 外的要因…地震や地盤沈下などによるもの
- 内的要因…家を建てるときの施工不良によるもの
どちらが原因で建物が歪んだのかを、状況だけで判断するのは難しいので、専門家がしっかりと調査をする必要があります。
建物の歪みが原因のクラックを「構造クラック」といいます。
構造クラックは幅が0.3mm以上と大きくなりやすい傾向があります。
構造クラックの中でも、壁を貫通してしまっているものを「貫通クラック」、窓や玄関など壁の開口部分にできるものを「開口クラック」と呼ぶこともあります。
クラック補修の基準は亀裂の幅が0.3mm以上
クラックの緊急度は、亀裂の幅の大きさによって変わります。
大きな亀裂であるほど、早めの補修が必要です。
クラックの幅 | 補修の必要性 |
---|---|
0.3mm以下 | 見た目が気になるなら補修する 補修をしなくても可 |
0.3mm以上 1mm以下 |
大きなクラックに発展する前に、早めの補修が必要 |
1mm以上 | 壁だけでなく、家の内部も劣化している可能性がある すぐに詳しい点検と補修が必要 |
ひび割れが何ミリなのか判断しにくい場合は、クラックに名刺を差し込んで確認することができます。
名刺が隙間にスッと入っているようであれば、すぐに専門業者へ連絡しましょう。
名刺がない場合は、紙製のスタンプカードなどでも代用できます。
クラックを補修する方法
一般的な戸建て住宅で、クラックを補修する方法は大きく3種類あり、クラックの幅やクラックしている壁材によって使い分けます。
クラックの補修方法 | 施工するクラックの幅の目安 | おすすめの壁材 | DIY |
---|---|---|---|
外壁塗装 | 0.3mm以下 | 特になし | 不可 |
シール充填(じゅうてん)工法 | 0.3mm以下 | ・モルタル ・サイディング |
可 |
カットシーリング工法 | 0.3mm以上 | ・コンクリート | 不可 |
クラックの幅はあくまで目安なので、どの工法で補修するのが最適なのかは専門業者に点検して判断してもらうのがおすすめです。
ここからは、それぞれの補修方法について詳しく紹介していきます。
外壁塗装
外壁塗装は、ヘアークラックや乾燥クラックを補修するときに行います。
壁の表面にできた細かいひび割れは、塗装をするだけで埋めることが可能だからです。
塗料にクラックができている場合、クラックしている箇所以外も劣化している可能性があるため、全ての壁を塗り替えするのがおすすめです。
外壁の全面塗装はDIYで施工できないため、専門業者に依頼しましょう。
シール充填工法
シール充填工法とは、クラックに「シール材」という補修材を詰めて、隙間を塞ぐ補修方法です。
クラックが0.3mm以下の場合によく用いられる工法で、補修材があれば施工することができます。
そのため、クラックの補修方法で唯一、DIYでも施工可能な工法です。
施工後は補修後を目立たなくするため、塗装も行うことがあります。
カットシーリング工法
カットシーリング工法は、クラックした壁をV字またはU字に削り、削った部分にシーリング材を詰める工法です。(Vカット・Uカット工法)
一度壁を削らなければいけないので、モルタルやサイディングなど薄い壁よりも、コンクリートなど厚い壁の使用がおすすめです。
壁を削ってクラックの溝を大きくすることで、割れた部分に均等に補修材を詰めて、補修の強度を上げることが可能になります。
施工には、電動カッターなど専門的な工具のほか、正しい知識や技術が必要なため、DIYでは施工できません。
DIYでクラック補修をする手順
クラック補修は、基本的に業者に依頼することをおすすめします。
微細なクラックに見えても、実は家にダメージを与えるような、深いひび割れである可能性もあり、どんな補修をするべきか素人では判断がしにくいからです。
どうしても自分で補修がしたい場合は、クラックが0.3mm以下の場合のみ、「シール充填工法」で、よく晴れた日に行いましょう。
クラック補修の方法
- 刷毛などでクラックの隙間を掃除する(高圧洗浄をする場合は2日以上おいて乾燥させる)
- クラックの上をなぞるように補修材を乗せる
- 指やヘラなどで補修材が隙間に埋まるように押し込む
- 補修材が乾かないうちに、再度②・③を繰り返す
- はみ出した補修材は、ヘラなどで削ってならす
- 塗装をする(見た目が気になる場合)
補修材は、水などと混ぜる必要がなく、ノズルがついていて直接注入できる製品が、手軽でおすすめです。
おすすめの施工道具
また、塗料は壁材に合わせて相性が良いものを選びましょう。
- モルタル・コンクリート…ウレタン塗料
- サイディング…シリコン塗料
クラック補修を業者に依頼する費用
クラック補修を業者に依頼すると、1か所あたり300円~4,000円ほどかかります。
シール充填工法の場合300円~900円、カットシーリング工法の場合は1,000円~4,000円が相場です。
塗装をする場合は、補修部分のみなら1~2万円、家全体の塗り替えは70~180万円が上乗せされます。
補修工法 | 費用相場(1か所あたり) |
---|---|
シール充填工法 | 300円~900円 |
カットシーリング工法 | 1,000円~4,000円 |
外壁部分塗装 | 1~2万円 |
外壁全面塗装 | 70~180万円(1軒分) |
手が届かない場所にあるクラックの補修は、足場の設置しなければいけないため、10~20万円が上乗せされます。
足場を設置しなければいけない場合は、外壁全面の塗装や屋根の塗り直しなども同時に行うことで、足場設置が1回で済み、割安にできるのでおすすめです。
まとめ
クラックは、亀裂の幅によって、補修するべきかどうか判断することができます。
- クラックの幅が0.3mm以下…放置することも可能
- クラックの幅が0.3mm以上…すぐに補修が必要
ただし、今は細かいクラックでも、壁や塗料の劣化に伴って、大きなクラックに成長してしまう可能性があるため、専門業者に点検を依頼するのがおすすめです。
クラックの補修方法は3種類あり、クラックの大きさや壁材によって使い分けます。
- 外壁塗装…クラックの幅が0.3mm以下で、塗料部分のみに劣化がある場合に使用可能
- シール充填工法…クラックの幅が0.3mm以下の場合に使用する(DIY可能)
- カットシーリング工法…クラックの幅が0.3mmを超える場合や、壁の厚いコンクリート外壁などで使用する
シール充填工法やカットシーリング工法を行った後、補修部分を目立たなくさせるために、塗装を行うこともあります。
補修工事はDIYで行うこともできますが、内部に深刻な劣化が隠れている可能性もあるので、専門業者に任せるのがおすすめです。
業者にクラック補修を依頼すると、1か所あたり300円~4,000円ほどかかります。
クラックが大きくなるほど、費用も増えていくので、クラックを見つけたら放置せず、すぐに業者に相談しましょう。