外壁の劣化症状と原因|補修方法と費用相場も解説

どんなにきれいな外壁でも、年月が経てば劣化していきます。
外壁が劣化する原因には、紫外線や雨風のほか、さまざまな原因があり、外壁にもたらす症状もバラバラです。
今回は、外壁が劣化する原因、外壁劣化の症状例、外壁が劣化したときの対処法と費用、点検・診断について解説します。
必要な点検・診断をおこない、適した対処法を取ればマイホームを長持ちさせることができます。
ぜひ、参考にしてみてください。

監修者:友田雄俊 ホームインスペクター
大手リフォーム会社にて、木造戸建て住宅リフォームの営業・設計・工事監理に従事。
外壁塗装などのメンテナンス工事から、フルリノベーションまで幅広く手掛ける。
その後、株式会社さくら事務所に参画。

外壁の主な劣化原因は太陽光と雨風
新築の際や塗り替えできれいになった外壁も、月日が経つとどんどん劣化が進んできます。
外壁の劣化原因としては具体的には以下の2つです。
- 太陽光(紫外線と熱)
- 雨風
これらにより外壁塗装は劣化していくことから、外壁の塗料には目安となる耐用年数が設けられています。
それでは、ひとつずつ詳しく解説していきます。
1.太陽光(紫外線と熱)
外壁の劣化原因の最たるものは太陽光です。
人間が紫外線を肌に浴びると日焼けが起こり肌荒れしてしまうように、紫外線は外壁にも影響を及ぼします
野外の看板などが色あせているように、紫外線の影響で外壁に使われている塗料が劣化して色あせが起こります
さらに紫外線にさらされると顔料が分離し、外壁の表面に白い粉がふきだします。
これを「チョーキング現象」といい、放っておくとひび割れが起こり、壁の中に雨水が入り込んで雨漏りを起こし、建物の強度を劣化させることに繋がり大変危険です。
2.雨風
雨風も重大な劣化原因になります。
雨風で汚れと雨粒が交じったものが外壁に付着すると、乾燥した後汚れが蓄積したままになります。
また、サッシ枠や外壁の凸凹、屋根材などは日常的に汚れが蓄積しやすく、その汚れが雨とともに滴り落ちると、雨だれになって外壁に跡がつきます。
さらに雨による湿気は藻、カビやコケなどの発生原因にもなります。
それらが成長すると外壁に常に湿気が含まれる状態になり、さらなる劣化を引き起こすため注意が必要です。
外壁の劣化症状
外壁の劣化症状としては以下が挙げられます。
- 変色・退色
- チョーキング
- ひび割れ
- 塗膜の浮き・はがれ
- コーキングの割れ・はがれ
- カビ・コケ・藻の発生
- サビの発生
すぐに自宅の外壁が劣化していないかチェックしてください。
以下、それぞれについて詳しく解説します。
変色・退色

ツヤあり塗料や色鮮やかな塗料を塗っても、紫外線や雨風にさらされ、どんどんツヤが減少していきます。
その後、塗料の色が薄くなり変色・退色(色あせ)していきます。
色あせが起こる原因としては塗膜を守る樹脂が劣化するからです。
色あせは塗膜自体の防水性が落ちてきているサインであり、放っておくと壁が水をはじかなくなり、雨風に弱くなってしまいます。
チョーキング

「白亜化現象」ともいわれるチョーキングは、塗料の中の顔料が劣化することによって起こります。
外壁の表面にチョークのような粉が出現してくるため、チョーキ ングという名前がつけられています。
チョーキングが起こる原因はほとんどが紫外線や雨風によるといわれています。
チョーキングは大体塗料の耐用年数が過ぎる1~2年前に発生するといわれ、塗り替え時期が近づいていることを知らせるサインです。
ひび割れ

ひび割れはチョーキングを放っておいた場合や、地面や交通振動などにより外壁に力が加わり発生することもあります。
ひび割れは見た目が悪いだけでなく、割れた隙間から雨水が浸入することにつながります。
建物内に雨水が入り込むと雨漏りとなったり、建材の腐食へと繋がるため大変危険です。
また、カビやシロアリが増える原因にもなります。
さらに建物内の腐食が進むと耐震性に影響が出て、倒壊する危険性も高まります。
ひび割れを見つけたら、まずどれくらいの幅か確認してください。
幅が0.3mm未満であれば早急に対応する必要はなく、経過観察でも問題ありません。
軽度なひび割れなので、自分で補修することもできます。
しかし、ひび割れが高所にある場合や、幅が0.5mm以上の場合は早急に業者へ依頼しましょう。
塗膜の浮き・はがれ

チョーキングなどを放っておくとついに塗膜がはがれて、外壁材の下地が見えてきます。
ここまで来てしまうと外壁材自体が何からも守られず、急速に劣化が進んでしまいます。
軽い程度の塗膜の劣化なら塗り直しで何とかなる場合が多いですが、塗膜の浮き・はがれにより外壁材自体が劣化してしまうと、外壁材の張り直し、重ね張りが必要になりメンテナンス費用もかさみます。
コーキングの割れ・はがれ

コーキングは壁材と壁材を繋ぐもので、これが劣化すると建物の下地にまで雨水が入ってしまいます。
コーキングの寿命はだいたい5~10年といわれており、定期的に打ち直す必要があります。
せっかく立派な家を建ててもコーキングの劣化を放置し、耐用年数が短くなってしまったら、もったいないですよね。
コーキングの厚みが減っていたり、ヒビが入っていたり、取れてしまっていたりしているのを見つけたら、コーキングの補修をおこないましょう。
カビ・コケ・藻の発生
外壁塗料が劣化して水をはじかなくなると、外壁が雨水を吸い込み、カビや藻、コケの発生につながることもあります。
カビ、藻、コケがそのまま広がっていくと、それらがさらに水分をため込むようになり、劣化がより進んでいきます。
このような悪循環が起こる前にすぐに洗浄することをおすすめします。
ただし、塗装をすることなく、市販の高圧洗浄機で圧力高く洗浄だけしていくと、かえって外壁材を痛めることに繋がります。
高圧洗浄機で洗浄を行う場合は、圧力を上げ過ぎないように注意が必要です。
サビの発生
トタンや、金属製サイディングなど金属製の外壁材を使用している場合の劣化症状としてサビの発生があります。
また、金属製以外の材質でも「もらいサビ」といい、鉄製の窓枠、壁の近くに置いた自転車やベランダの手すりなどの金属部のサビが外壁に移るという現象も起こります。
初期段階のサビならスポンジやブラシでこするだけで落とせる場合があるので、拡がらないうちに対処しましょう。
外壁の劣化を見つけたときの対処法と費用
外壁の劣化を見つけたらどうすればいいのでしょうか。
具体的には以下の対処法があります。
対処法 | 補修費用 |
---|---|
コーキングの打ち替え | 約25~40万円 |
高圧洗浄・バイオ洗浄 | 高圧洗浄約2~3万円、バイオ洗浄約2.5~4万円 |
塗り替え | 約70~110万円 |
重ね張り | 約100~220万円 |
張り替え | 約170~250万円 |
以下でそれぞれの費用も含め詳しく解説します。
ちなみに費用は一般的な30坪の戸建て住宅の外壁として計算しています。
コーキングの打ち替え
劣化しているコーキング材を撤去し、新しいコーキング材を打ち直す作業をコーキングの打ち替えといいます。
コーキングは塗料より劣化が早いため、メンテナンスは欠かせません。
高い場所の作業も増えるため足場設置も必要となり、費用総額は25~40万円ほどになります。
一般的に、コーキングの打ち替えは外壁の再塗装と合わせて行うことが多いです。
高圧洗浄・バイオ洗浄
強力な水圧で外壁の汚れを落とす高圧洗浄は、水だけであっという間に汚れがきれいになります。
また、さらに薬品を使い汚れを落とすバイオ洗浄は、カビや藻、コケなどで外壁が汚れている場合に効果的です。
高圧洗浄で2~3万円、バイオ洗浄で2.5~4万円ほどの費用がかかります。
しかし、劣化してもろくなった外壁にこれらをおこなうと外壁を壊してしまう危険があるため注意が必要です。
たとえば、以下のケースでは高圧洗浄機、バイオ洗浄機の使用は危険です。
- チョーキングが起こっている
- ひび割れが起こっている
- 塗装が剥げている
- シーリング部分の変形、ひび割れ
これらが起こっている場合は、外壁の防水機能が落ちていたり、隙間から建物に水が入り込む危険があるため、早急な再塗装や補修を業者に依頼する必要があります。
また、塗装をすることなく、市販の高圧洗浄機で圧力高く洗浄だけしていくと、外壁材を痛めてしまいます。
高圧洗浄を行う場合は、圧力を上げ過ぎないように注意して行いましょう。
塗り替え
一般的な対処法として塗り替えがあります。
塗料と外壁材の種類によっては重ね塗りに向かない組み合わせもあるため、外壁材と相性のいい塗料を選ぶ必要があります。
たとえば、ガルバリウム鋼板などの金属系サイディングには、耐用年数が短いアクリル塗料は向きません。
中でも水性塗料はあまり相性が良くないため、油性塗料を選ぶようにしましょう。
一般的なシリコン塗料で塗り替えをする場合はだいたい70~110万円ほどかかります。
なお、耐用年数の高い塗料を選ぶと1㎡あたりの費用は高くなりますが、より長持ちします。
代表的な4種類の塗料の種類、耐用年数、費用については以下の通りです。
塗料 | 耐用年数 | 1㎡あたりの費用 |
---|---|---|
アクリル樹脂塗料 | 5~7年 | 1,400円~ |
ウレタン樹脂塗料 | 7~10年 | 1,700円~ |
シリコン樹脂塗料 | 10~15年 | 2,200円~ |
フッ素樹脂塗料 | 15~20年 | 3,800円~ |
耐用年数と費用は比例する傾向がありますが、その分塗り替えの手間が少なくなるため、長い目で見たらお得という考え方もあります。
外壁塗装の時期については「外壁塗装の時期」メンテナンス費用については「外壁のメンテナンス」で詳細を確認できます。
重ね張り
元の壁材の劣化がひどい場合は、古い壁材の上から新しい壁材を重ね張りする手法があります。
重ね張りする外壁材は軽量であることが求められるため、金属系サイディングなど金属系が一般的です。
流れとしては足場を設置し、古いサイディングを補修、下地材や防水シートを設置したあとに、新しいサイディングを設置していきます。
最後にシーリング処理をおこないます。
これらの工程をすべて含めた総額はだいたい100~220万円ほどです。
張り替え
壁材の劣化がかなり進んでいる場合は、重ね張りをすることができず、一度古い壁材をはがしてから新しい壁材を張り替える必要があります。
費用は170~250万円ほどになります。
塗り替えや重ね張りと比べると、古い壁材を剥がす工程が追加されるため、工事費用の総額が高くなってしまうので注意しましょう。
外壁の劣化に気づいたら診断・点検を受けよう
外壁の劣化はチョーキングやひび割れ、色あせなど目に見えるものもありますが、気づかないうちに劣化が進んでいる場合もあります。
劣化に気づかず放置すると、外壁が雨風などを防げなくなり、建物内部に雨水が入り込んでさらなる劣化へつながる危険があります。
今はリフォーム業者による点検や、住宅診断(ホームインスペクション)専門の業者による診断・点検もあります。
こうした業者による診断・点検を定期的に受ければ、自分自身の判断だけでは気がつかない劣化を発見することができるだけでなく、どのようなメンテナンスがどの時期に必要かなどの計画をより正確に立てられるようになります。
診断・点検したからといって必ずしも業者に発注しなくても大丈夫なので、まずは気軽に点検を受けてみましょう。
まとめ
それでは、外壁の劣化症状についておさらいしましょう。
- 外壁の劣化原因で代表的なものは、太陽光(紫外線と熱)、雨風、の2つ
- 外壁の劣化症状としては、変色・退色、チョーキング、ひび割れ、塗膜の浮き・はがれ、コーキングの割れ・はがれ、カビ・コケ・藻の発生、サビの発生などがある
- 外壁の劣化を見つけたときの対処法としてはコーキングの打ち替え(約25~40万円)、高圧洗浄(約2~3万円)、バイオ洗浄(約2.5~4万円)、塗り替え(約70~110万円)、重ね張り(約100~220万円)、張り替え(約170~250万円)がある
- 外壁の劣化に気づいたら診断・点検を受けるのがおすすめ
外壁はさまざまな原因で劣化していきます。
劣化を放置しておくとさらなる劣化が進み、最悪の場合倒壊の危険まであります。
少しでも異常を感じたら、それぞれの劣化症状に適した対処法をとりましょう。
監修者情報

監修者:友田雄俊 ホームインスペクター
大手リフォーム会社にて、木造戸建て住宅リフォームの営業・設計・工事監理に従事。
外壁塗装などのメンテナンス工事から、フルリノベーションまで幅広く手掛ける。
その後、株式会社さくら事務所に参画。
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