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更新日: 2024年7月22日
風呂やトイレ、エアコンといった住宅設備の故障や雨漏り・水漏れなどによって退去を余儀なくされた時、引越しの費用を賃貸オーナーに請求することはできるのでしょうか。
また、「引越し先の新居の契約費用も旧居のオーナーに請求は可能なのか」など、トラブルによる引越しの不安は尽きません。
本記事では、住設故障にまつわる引越し費用請求の疑問について、Q&A形式で回答します。
監修者:弁護士 日野哲志 / みやこ法律事務所
IT企業での勤務を経て、2009年に慶應義塾大学法務研究科修了、同年に司法試験合格。神戸市内の法律事務所を経て2019年よりみやこ法律事務所にパートナーとして参画。不動産の賃貸借や売買、建物の建築や隣接地のトラブルといった、不動産関係の争いごとを中心に解決に取り組んでいる。
目次
住宅設備の故障を物件オーナーや管理会社へ伝えても長期間対応してもらえず、引越しせざるを得ない状況に陥った場合は、引越し費用を何らかの形で物件オーナーに請求できる可能性があります。
前提として、給湯器やキッチンなどの住宅にあらかじめ備え付けられている初期設備は、物件オーナーが修繕すべきとされていることが一般的です。
エアコンも物件オーナー負担の場合が多いですが、そうでないケースもあります。
どの設備の修繕が物件オーナー負担なのかについて、賃貸借契約書に記載されていることもありますので、一度ご確認ください。
不調や故障の原因が入居者にある場合は借主が負担することになる場合もありますが、そうでない場合には物件オーナーには入居者が一般的な生活を継続できるよう、対応しなければならないのです。
ですので、初期設備について不具合が生じた場合は、まずは物件オーナーや管理会社に連絡をして、対応してもらうよう要望しましょう。
対応を怠って生活を続けられず入居者が引越しを余儀なくされたとすれば、「損害賠償請求」の形で引越し費用を請求できると考えられます。
前述のように住宅設備の故障に適切に対応してもらえなかったり、不当な理由で一方的に契約解除を求められて引越しを余儀なくされたりしたのであれば、新居の契約費用も損害賠償の対象となる可能性が高いといえます。
ただし、新居の家賃については全額請求することは難しいケースが多いです。
同等の新居に移る前提で賃料が上がってしまう場合は、賃料増加分の数ヶ月程度であれば請求する余地はあります。
例えば旧居の居住スペースが全てではなく一部だけ使えなくなって引越しを行うケースなどでは、家賃の減額措置などで旧居の家賃が一部だけ返還されるなどの措置も考えられます。
どのような理由で引越しせざるを得なくなったのかによっても、新居の契約費用を旧居のオーナーに請求できるかどうかは異なります。
例えば入居者の生活態度に問題があり、オーナーから再三注意されているにもかかわらず改善されず、引越しを求められたのであれば、入居者の過失として新居の契約費用を求めることはできないと考えられます。
住居の初期設備に入居者の過失でない設備不良がある場合、基本的には賃貸物件オーナーの責任で修理・交換を行う必要があるといえます。
ここでいう「初期設備」とは、物件とセットになって提供される設備一式のことです。
エアコンやガスコンロ、給湯器、温水洗浄便座など、入居者の持ち込みではなく初めから備え付けられている設備のことを指しています。
ただし、初期設備の範囲は物件ごとに異なりますので、賃貸借契約書をよくご確認ください。
また、入居者には「善管注意義務」という義務があり、入居中に設備不良を発見した場合は速やかに大家や管理会社に報告しなければなりません。
この義務を怠ったと判断されれば、設備不良の原因が入居者側にもあると主張される可能性もあります。
設備不良にどのように対応するかを最初に決めるのは大家または管理会社になるため、入居者が勝手な判断で修理・交換をした場合は、物件オーナーに負担を要求できない可能性も出てきます。
賃貸トラブルがオーナーとの話し合いで解決しないようなら、各種機関に相談するという方法があります。
代表的な機関は市区町村の相談窓口や国民生活センター、法テラスなどが考えられます。
市区町村では無料で弁護士にトラブル相談ができる窓口が設けられているため、事前予約をしてトラブルの内容を相談してみることが可能です。
また、国民生活センターは電話でトラブルの内容を相談できます。
なお、管理会社が入っている場合には、その管理会社を管轄する窓口が都道府県に設置されていますので、そこに申し入れることも可能です。
法テラスでは、トラブルの内容を説明すると内容に適した法的制度や窓口を紹介してもらえるだけでなく、条件に当てはまると民事法律扶助制度を利用して、弁護士に無料相談することもできます。
設備不良の証拠は、原状回復見積書や該当箇所の写真や動画、室温の計測結果(エアコンの設備不良の場合)などが挙げられます。
設備不良の箇所を写真に収めることで、視覚的に故障や不調を判断できるため、目に見える形で設備不良が起きているのであればスマホなどで写真を撮影しておくのがおすすめです。
さらに、エアコンであれば室温を定期的に計測して室内が暖まらない(冷えない)ことを動画で記録しておけば、設備不良が起こっている証拠として活用できます。
ムービーで記録すれば動作不良なども分かりやすく記録できます。
また、引越しにあたって大家や管理会社から提示された原状回復見積書の内容に設備不良の初期装備の修理・交換が含まれていれば、証拠のひとつとして活用できる可能性があります。
設備不良について不当であることを訴え出る際は、事前に物件オーナーや管理会社に対して改善要求を重ねてきた証拠となる音声データや、トラブルの時系列をまとめたメモなども効果的です。
住設故障によって引越しする際の費用関連について、お伝えした内容は次のとおりです。
住設故障によって引越ししなければならなくなった時には、ぜひ今回ご紹介した内容を参考にしてみてください。
監修者:弁護士 日野哲志 / みやこ法律事務所
IT企業での勤務を経て、2009年に慶應義塾大学法務研究科修了、同年に司法試験合格。神戸市内の法律事務所を経て2019年よりみやこ法律事務所にパートナーとして参画。不動産の賃貸借や売買、建物の建築や隣接地のトラブルといった、不動産関係の争いごとを中心に解決に取り組んでいる。
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