原状回復費用が高額なとき、支払いの拒否や減額交渉はできる?

2022/04/12公開

原状回復費用が高額なとき、支払いの拒否や減額交渉はできる?

賃貸物件から退去するとき、「原状回復費用」を請求されることがあります。
多くの場合、敷金を支払っていれば、敷金の中から原状回復費用を支払い、残った分が返還されます。
しかし、敷金を支払っていない場合や、原状回復費用が敷金より高額になった場合、支払いを要求されます。

この記事では、賃貸物件の原状回復費用が高額だった場合に支払い拒否や減額交渉ができるのかどうか、法律の観点から解説してきます。

管理会社などから請求された原状回復費用があまりにも高額な場合、支払いの拒否や減額する方法はありますか?

管理会社などから請求された原状回復費用があまりにも高額な場合、支払いの拒否や減額する方法はありますか?

管理会社から請求された原状回復費用があまりにも高額な場合に、支払いに納得できない、もしくは減額してほしいと考える方は少なくありません。
想定よりも高額な原状回復費用を請求されてしまい、その金額の妥当性に疑問を感じる場合は、すぐに支払うのではなく一旦保留にして請求の明細を出してもらうように依頼しましょう。

敷金から原状回復費用を差し引くにあたって、賃貸人は賃借人への説明義務が課せられています。
説明を経ずに高額な原状回復費用を支払わせることはできず、明細の提示義務があるものと考えられます。

まずは受け取った請求明細の内容を精査した上で、「賃貸人が負担すべき部分」と「賃借人が負担すべき部分」をはっきりと切り分けましょう。
その上で、請求されている明細のなかに賃貸人が負担するのが妥当だと思われる部分が含まれているようであれば、その部分については減額に応じてもらえる可能性があります。

ただし、このような手順を経ることなく一方的に支払いを拒否してしまうと、原状回復費用の支払いに応じないとして賃貸人から訴訟を起こされることも考えられるため、解決に向けて真摯に対応しようとする姿勢が大切です。

敷金を支払っていても原状回復費用を支払う法的な義務はありますか?

敷金を支払っていても原状回復費用を支払う法的な義務はありますか?

原状回復義務とは、「賃借人の不注意や故意、経年劣化によらない損傷などを復旧する義務のこと」です。退去時に賃借人の責任で原状回復しなければならない範囲が広く、復旧にかかる費用があらかじめ支払っている敷金の金額を上回るようであれば、敷金を支払っていても原状回復費用を支払わなければならないと考えられます。

あらかじめ敷金を預けているかどうかが争点になるのではなく、「預けている敷金と原状回復費用の見積もり金額を照らし合わせて、原状回復費用が敷金を上回るようであれば原状回復義務に則って費用を支払う必要がある」といえるでしょう。

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監修者:高桒美奈(たかくわ みな) / 椿総合法律事務所・椿行政書士事務所オフィシャルサイト

専門家の解説

原状回復費用が、非常に高額な場合、減額交渉ができる場合が多いと思います。
もっとも、契約次第で結論は異なりますので、その点は注意が必要です。

原状回復が認められるか否かは、まず契約書の記載を確認することがとても大切です。
契約書上、原状回復の範囲について明確な規定がなければ、通常損耗、自然損耗を超えて回復費用を支払う必要はないといえます。
しかし、契約書に原状回復費の範囲として、通常損耗、自然損耗分も含むことが明確に定められ、その金額も不当に高額でない場合、借主は契約書の記載どおりの義務を負います。

この点、最高裁の平成23年3月24日判決は、契約書に借主が負担する通常損耗額の補修費用が明確に定められている場合、借主は敷引金額を明確に認識した上で契約するので、賃料と敷引金とで二重に負担することにはならないし、敷引金が高額すぎると評価できる特段の事情がない限り、借主を一方的に害するとはいえず、消費者契約法10条にも反しないとし、通常の賃料の月額の3.5倍強程度の事案について、敷引契約の有効性を認めています。

ですから、契約書に通常損耗、自然損耗についても、通常賃料月額の4倍程度を支払うことが明記されている場合、法的に争うことは難しいと考えられます(その他の具体的事情にもよると思います。)。

以上、契約内容や使用状況によっては、敷金を上回る原状回復費用を支払う必要がある場合もあります。

自費で安い業者に原状回復してもらっても問題ありませんか?

自費で安い業者に原状回復してもらっても問題ありませんか?

原状回復義務は「賃借人の責任で大きく損傷した部分を回復させる義務」を指しています。
そのため、自費で賃貸人が指定する以外の業者に依頼して原状回復を行うと、原状回復後の状態が賃貸人の想定と異なっていたなどの問題が発生するおそれがあります。

賃貸の想定と異なる原状回復を行ってしまうと、賃貸人が求める「元の状態」に戻すためにさらに原状回復費用を支払わなければならない可能性があるため、自分で業者を選んで原状回復を行うことは基本的におすすめできません。

どうしても自費で安い業者を選んで原状回復を行いたいのであれば、事前に自分で選んだ業者を使うことは可能かどうかを賃貸人に確認した上で、問題がない場合に限り行うことが重要です。

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監修者:高桒美奈(たかくわ みな) / 椿総合法律事務所・椿行政書士事務所オフィシャルサイト

専門家の解説

契約上、どのように原状回復するか、仕様等が定められていることは稀ですので、何をするか客観的に明確ということはほとんどないでしょう。
また、貸主側は元の状態に戻すのではなく、ある程度自己費用を負担して時代に応じたグレードアップをしたいと考えていることも多いはずです。

そこで、借主側で借りた時の状態に戻すということは現実的ではないと思います。
ご自身で、お値打な業者をご存じなら、貸主に紹介する等にとどめるのが無難でしょう。

仮に、借主自身が原状回復を行う(業者を手配する)場合、その業者の作業に不都合があれば、その点を再度補修等するために更に借主の費用が嵩むリスクを負うことになります。

原状回復すべき箇所で借りた側か貸した側のどちらの負担になるかの線引きを教えてください

原状回復すべき箇所で借りた側か貸した側のどちらの負担になるかの線引きを教えてください

賃借人の原状回復義務が適用されるのは「賃借人の故意や過失、不注意などによって状態が損なわれてしまった部分」です。
そのため、賃借人に責任が認められない部分は、賃貸人が原状回復を行う必要があります。

例えば経年劣化により壁紙が色あせたり、家具を設置して床が凹んだりした部分については、日常生活を送る上で避けようがないものであると判断されて通常は賃貸人の責任で原状回復を行うことになります。
一方で雨が室内に吹き込んだことによって畳が変色してしまったり、煙草が原因で壁紙にヤニが付いてしまったりした場合は、賃借人の責任になると考えられます。

あくまでも「賃借人に責任があるかどうか」で判断されるため、必ずしも劣化したり傷ついたりした部分を全て賃借人が修繕しなければならないわけではありません。
ただし、契約書のなかに特約が含められており、原状回復の範囲を超えた負担を賃借人に求められる場合もあるため、あらかじめ契約内容を確認しておくことが大切です。

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監修者:高桒美奈(たかくわ みな) / 椿総合法律事務所・椿行政書士事務所オフィシャルサイト

専門家の解説

退去時に補修が必要な箇所について、借主、貸主のいずれが補修費用を負担するべきかは、契約書を確認することが重要です。
契約書に明確な定めがあれば、それが高額過ぎる場合以外は、契約書のとおりとなると考えられます。

契約書に明確な定めがない場合、国土交通省のホームページで「原状回復を巡るトラブルとガイドライン」をご覧頂くと参考になります。
もっとも、このガイドラインは、あくまでも契約前に参考にする目的で作成されたもので、このガイドラインと異なる契約内容が無効であるという意味ではありませんので、注意が必要です。
あくまでも、契約書に具体的な記載がない場合には、参考にして頂けるということです。

どうしても原状回復費用を支払えない場合の救済方法などはありますか?

どうしても原状回復費用を支払えない場合の救済方法などはありますか?

原状回復費用の支払いが滞ると、最初に管理会社や保証会社から状況確認の連絡が入ります。
その後賃借人が原状回復費用を支払えない状況が続くようであれば、連帯保証人に支払いを肩代わりするように連絡が入ります。
それでも支払いが完了しないときは、裁判に持ち込まれる可能性もあるでしょう。

もしどうしても原状回復費用を支払うことが難しい場合は、管理会社や保証会社から連絡が入った段階で支払いが難しいことを素直に相談することが大切です。
支払い義務をなくすことは難しいものの、支払いを完了するまでの期間を猶予してくれたり、支払いの分割相談に応じてくれたりする可能性があります。

ただし、明らかに高額な請求が疑われる場合は、請求が妥当かどうかを調査してみることも方法のひとつです。
原状回復費用の見積もり明細を精査し、賃貸人と賃借人の責任範囲を明確にすることで、減額が可能なケースもあります。
とはいえ見積もり内容に妥当性があるようなら支払いの拒否はできないため、基本的には時間がかかっても全額を支払わなければならないものと考えておきましょう。

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監修者:高桒美奈(たかくわ みな) / 椿総合法律事務所・椿行政書士事務所オフィシャルサイト

専門家の解説

経済的な事情により生活資金にお困りの場合は、厚生労働省のホームページ等で給付金が得られないか、生活資金を借りられないか等を確認したり、役所の福祉課等にご相談されることをお勧めします。
また、一括では原状回復費が支払えない場合は、貸主(管理会社)にその旨を相談し、分割払などの無理のない支払方法を申し入れるのが良いと思います。
原状回復費以外の債務も滞納している状況が続いているなど、返済の目処が立たない場合は、債務整理や破産手続などを弁護士に相談され、経済的な再起を図るのが良いと思います。

監修者情報

監修者:高桒美奈(たかくわ みな) / 椿総合法律事務所・椿行政書士事務所オフィシャルサイト

【略歴】
南山大学法学部卒
平成15年弁護士登録
勤務弁護士経験を経て、平成19年6月椿総合法律・行政書士事務所開設

【所属委員会】
愛知住宅紛争審査会運営委員会

【所属団体・研究会】
愛知県弁護士会西三河支部 支部長(令和3年度)
日本マンション学会 中部支部 幹事
全国マンション問題研究会 会員
民事法務研究会 会員

公式SNS https://www.facebook.com/tsubaki.law
専門・得意分野 マンション問題
離婚・男女問題
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